正直、あの時のことはよく覚えていない。 思い出したくないだけかもしれないし、忘れたいだけかもしれない。 ただ、絡み付く体がやたら汗ばんで熱かったこと、押し倒したマットが埃臭かったこと、 あいつの体を揺さぶる度に舞う埃が小さな窓から差し込む光にきらきらと輝いていたこと、それだけはやたら鮮明に覚えている。 その行為が気持ち良かったのか、ちゃんと快感を生んだのか、それとも不愉快極まりないものだったのか、 俺はちゃんと達したのか、そんなことは何一つ覚えていない。 ただ、あのきらきら輝く光景とすえた匂いと熱い体の感触ばかりが何度も頭の中で繰り返された。 それに興奮するわけでも、気分を害すわけでもなく、俺は単純にそんな事実もあったな、とあっさりと認識する。 それは一度切りの過ちだった。たった一度切りの過ちだった。 なかったことにされた過ちだった。俺も臨也もあの日以降、そのことには一切触れたりしなかった。 忘れ去られていく過ちだった。その筈だった。

「シズちゃん、あれから少しは上手になったの?」
しかし、忘れ去られていく筈だった過ちはたった一言で息を吹き返し、鮮やかに生々しく蘇る。 まるで昨日のことのようにはっきりと、鮮明に再現される。 なんてリアルなフラッシュバック。 襟首を掴んで持ち上げたむかっ腹の立つ顔がゆっくりと消失し、目の前が真っ白になった。 そうして俺はあの日を思い出す。

暑い、暑い。馬鹿になりそうなくらいに暑い。まだ夏前だというのに座っているだけでじっとりと嫌な汗をかく。あの日はそんな日だった。 そして、あの悲惨な結末に辿り着く迄にはいくつもの奇妙な偶然が複雑に絡み合い、話をややこしくしていたのだった。

クラスの数人が教室の隅で固まって騒いでいた。その中の誰かがコンドームを財布に入れていると童貞を卒業できるらしいと言った。 またその中の誰かがコンドームを持っていると言った。 更にその中の誰かがみんなで財布に入れようと言った。 そして、輪の外で人畜無害な顔で笑っていた神羅がそれを一つひっそりと俺の財布に忍ばせた。 そうして、いつものように些細なことで臨也が俺を怒らせる。 ズボンに突っ込んでいた財布をスられた。奪い返そうとしているうちに体育倉庫に逃げ込まれた。 ぶっ殺すと意気込んで追い掛けると臨也は薄暗い中で跳び箱の上に座り込み俺の財布からそれをつまみ出していた。
「うわーシズちゃんってこういうの信じる方?」
息一つ乱さず冷笑を浮かべた臨也が眼前の高さに小さな包みを掲げて詰る。浅く呼吸を繰り返しながら神羅の仕業か、と舌打ちを零すも後の祭りで、 臨也は良い玩具を見付けたとばかりに益々双眸を細くする。
「でも、だめだね。知ってる?財布の中じゃあ、コンドームに傷がつくからよくない。そんなデリカシーのない男は嫌われるよシズちゃん。アレ? そもそもシズちゃんって童貞だったの?知らなかったなー!いやいや俺はてっきり…ああ、いやこの先は言わずにおくよ。あんまりに野暮ってもんだ」

臨也は指先で包みを遊ばせながらまくし立てる。その様はまったく愉快そうで、獲物をいたぶる獣そのものだった。 ふつふつと体の中心から湧き上ってくる怒りを更に増幅させるべく俺はゆっくりと息を吐く。
「ふー…」
随分と長い間閉め切られていた小さな倉庫の中はひどく空気が澱んでいて息苦しい。 唯一ある窓にも錆び付いた鍵が掛かっていて最後に開けられたのはいつだったのかわからない。 熱気ばかりが籠って不快だった。高い位置にある窓から差し込む光が臨也を照らす。 舞い上がる埃がきらきらと輝いていた。
「そうかそうか、シズちゃんは童貞だったのか。そうとは露知らず俺は今までなんて失礼な扱いをしてきたんだろう!申し訳なくさえ思えてきたよ」
よく動く口だ。飽きれを通り越して半ば感心さえする。こいつはきっとあれだ。 口から先に生まれてきたに違いない。そうでなければこんなにも喧しく喚く筈がない。 ああそれにしてもここは暑い。カッターシャツの襟首からじわじわと熱気が込み上げてくる。 暑い、それにしても、暑い、いやうるさい、熱い、うるさい、よく動く口だ、暑い、熱いうるさい熱い熱い熱い熱い熱いアツ、イ

気が付くと跳び箱から投げ出されぷらぷらと揺れていた片足を掴んで引きずり降ろし、あまつさえ黴臭いマットの上に臨也を押し倒していた。

「何の真似?」
汗一つ見せず涼しげな顔で臨也は俺を見上げた。 ぎりぎりと掴む肩に指を食い込ませる。微かに顔を歪めるも余裕を含ませた目元を晒す。
「いやだなァーシズちゃん、いくらなんでも俺で童貞喪失なんて笑えない冗談はやめてくれる? タダでさえ存在自体が冗談みたいなものなのに」
臨也の口が動く。唇が閉じたり開いたり。ひらひらと舌が覗く。うるさい口だ、まったく、それにしてもああ暑ィ。 熱い、あついうるさいあついうるせえあつ、い
「あ゛ァー…いーざーやーくんよぉー…なァ…暑いと思わねーか?やたら暑いと思わねー?こんなに桁外れに暑いと俺はまた苛々しちまってよぉ…ああ暑ィ…」
唐突に言葉を発し始めた俺を訝しげに見る細い眼。
「それで?とうとうデタラメな体だけじゃなく頭もイったとか言うつもり?シズちゃんもおとなしくしてれば顔はいいのにねぇ可哀相に。 だから未だに童貞、おっと失礼。これはもう言わない約束、」
臨也はここで言葉を切った。いや、正しくは切らざるを得なかった。 ガツン、と派手な音がして前歯に衝撃が走る。恐らく臨也もそうだったのだろう。 盛大に眉を顰めて小さく呻いた。何事か発するために唇が開かれたタイミングを狙って舌を捩じ込む。 自分が何をしているか分からなかった。殺したい程嫌いな相手に唇を押し付けている。 その事実はあまりに現実味がなく、見よう見まねで柔い唇に噛み付いたり、舌を吸ったりしているうちに脳にぼんやりと膜がかかったみたいになって思考が停止した。

幾度も下手くそな口付けを繰り返し、口内に血の味が広がる。
「…は、っ、俺はね、シズちゃん…売られた喧嘩は買う主義だから」
おもむろに強く後ろ髪を引かれて顔を離すとやけにぎらぎらした臨也の目があった。 呆気に取られているうちに、不意に臨也の腕がするりと首に絡む。
「場所、交代」
そのまま器用に体を反転させて、気が付くと俺が組み敷かれていた。 見上げる顔はいつもと同じ憎たらしい臨也の顔なのに、何かがいつもと違った。 俺は恐怖に近いものを感じ慌てて制止に入る。
「おい、ちょっと、待て…」
「ここまで煽っておいて?それはないでしょ、シズちゃん。あんまりだ」
そうして臨也の顔が近付いてきたかと思うと掠めるように唇を触れさせて赤いそれが弧を描いた。
「シズちゃん、キスはこうやってするんだよ」
吸い寄せられるように唇が触れ合って、今度はぶつかることなく重なる。 幾度も繰り返されるうちにひどく自然な動作で舌が差し込まれた。 口内で俺の舌先を探り当てると巧みに絡ませ水音を響かせる。 誘われるままに舌を伸ばせば、臨也の歯に捕らわれた。 柔く甘く噛み締められて、自分の息が上がっていることに気が付いた。

ゆっくりと体を離して臨也が「目くらい瞑れば?情緒の欠片もないんだから」と笑った。 あまりに慣れたその動作に軽い眩暈を覚える。こいつは誰だ。俺に伸し掛かって微笑んでいるこの男は、いったい、誰だ。 臨也はしなやかに上体を逸らすと腕を後ろに引き俺の太股に指を這わす。 臨也の指が太股の形を確かめるように股間をまさぐり、ソコに辿り着いた。びくん、と体が跳ねる。
「あれ?シズちゃんコレどうしたの?」
臨也が笑いを含んだ声音で問う。その指では屹立した俺自身をやわやわと揉み込みながら苛むことをやめない。
「…うるせー。生理現象だ」
へぇ、と呟いていきなり臨也は体をずらし、俺の脚の間にしゃがみ込む。 制止の声をかける間もなくベルトを外し、勃ち上がった性器を取り出した。
「!…おい!」
肘を付いて上体を起こして見やると憎たらしい顔でニヤリと笑って舌なめずり。
「童貞は黙ってればいいんだ」
そう言って徐に舌を這わせた。幹に絡ませるように舌をくねらせ、根元から先端に向けて舐め上げるとゆっくりと口内へと飲み込んでいく。 温かい粘膜の中に埋め込まれていく感覚に思わず声を漏らした。
「う、わ…」
奥までしっかり咥え込んだまま俺の声につられたかのように目線だけをこっちに寄越す。 額に掛かった前髪の隙間から俺を見上げる二つの目。臨也が目だけで笑った。 それ以上見続けることができなくて俺は薄汚いマットに背を預ける。また眩暈を覚えて片腕で顔を覆った。

舐めて吸って甘く噛んで。舌先でつついて転がして捩じ込んで。 唾液や先走りでぐちゃぐちゃになったペニスを白い手で扱きながら、睾丸をなぶる。先端の括れに指を這わせて幾度も擦る。
「ああ…シズちゃんそろそろイきそうなんでしょ?ビクビクして可愛いなぁ」
一度根元まで飲み込みゆっくりと吸い上げながら口を離して臨也が笑う。
「イかせてあげようか」
やめろ、と発したつもりの唇からは上擦った吐息しか漏れず、俺は目を瞑る。臨也がくちゃくちゃと水音をさせてペニスを扱く。 掌の動きに合わせてまた温かい口内に飲み込まれていく。 そのまま激しく上下されて俺はあっけなく上り詰める。
「いざや…っ!離せ…!」

それでも臨也は口を離さず、深々と俺を咥え込んだまま目だけで笑った。 その瞬間にびくんと体が跳ねて俺は臨也の喉の奥へ精子を注いだ。 びくびくと痙攣する性器を最後の一滴まで搾り取るように臨也がゆっくりと時間をかけて吸い上げる。 名残を惜しむように唇がそっと離れて白濁を口に含んだまま臨也が口角をあげた。

何かに憑かれたみたいに臨也から目が離せなくてまじまじと青白い顔を見詰める。 臨也は俺に跨がったままもったいぶるように口を開いて中の白濁を見せ付ける。 そうして恭しく片手を掲げると、その掌へどろりと精子を吐き出した。 白濁の絡まった舌を生き物のように巧みに動かして自分の指全体を舐め回す。 逆手は器用にベルトを外しズボンを脱ぎ去っていた。 黒のボクサーを押し上げて臨也の性器が主張する。黒地に染みが出来ていて妙に卑猥だと思った。
「さぁ問題。シズちゃん、俺はこの指をどうするでしょう」
唾液と精液で滑る指先を擦り合わせてまた開く。 とろりとした液体が指の間に糸を引いた。 あまりに倒錯的なその光景に思わず俺は顔を背けた。 背けた先には古ぼけたボール籠や跳び箱、縄跳びが散らばっていて、そう言えばここは体育館倉庫だったと思い出す。 顔のすぐ横を小さな窓から差し込む光が照らす。舞い上がる埃がきらきら輝いていて、更に現実が分からなくなった。 不意に臨也が浅く息を継ぐ。
「…は、」
視線を向けると臨也は自らの体内に指を埋め込んでいた。一瞬何をしているのか分からなかった。 臨也の生白い腕が尻を割り開き、さっきべたべたにした指がそこに埋められている。眉を顰めた俺に臨也が笑って言った。
「あのね、シズちゃん。男同士でヤる時はココでするんだよ」
臨也の言葉が理解できない。既に思考を放棄しかけていた頭が一層混乱する。
「やめ、ろ…!」
思わず漏れた声などお構いなしに臨也は秘部に俺のペニスを宛てがいゆっくりと腰を落とした。
「は、っ!」
狭い肉壁を割って滾った俺の雄が埋め込まれていく。さっきの口淫とは比べ物にならないぐらいの締め付けに息が詰まる。 見上げると臨也が白い喉をのけ反らせて身を震わせていた。
「ァ、あ…く、!」

少しずつ、少しずつ、臨也の中に俺が飲み込まれていく。 そして、その瞬間はいきなり訪れた。頭の中で何かが音を立てて切れた。 それはいつものあの気違い染みた暴力が発動する時と同じくらいに荒々しい衝動。 揺れる臨也の腰を掴んで一つ激しく突き上げた。
「!?…ひ、ア…っ!」
「おいノミ蟲…ちんたらしてねーでさっさと挿入れやがれ」
口を動かす合間にも幾度も幾度も突いてやる。 臨也は急過ぎる律動に耐えるように唇を噛み締めた。 両手で掴んだ華奢な腹部に爪を立てる。 赤い痕が幾筋も残るが、気にせずに闇雲に腰を動かした。
「…ッ、ちょっと、ま…って…!!」
俺の上で臨也がバランスを崩す。 ぐらりと体が傾いで背後に大きく反る。 その動きに合わせるように俺は上体を起こし、再び臨也をマットに組み敷いた。 随分と動きやすくなる。 いつだったか見たAVのように臨也の脚を肩に担いで腰を進める。

女みたいだと思った。白い肌も、柔らかな関節も、薄らと上気する汗ばんだ顔も、俺を睨みつける眼も。 全部、女みたいだと思った。 そこにいるのはいつもの神経を逆撫でする折原臨也でも、さっき垣間見た気色悪いぐらいに大人びた折原臨也でもなく、俺に犯されているただのノミ蟲だった。 ひどく脆弱で、か弱い被害者だった。 臨也は顔を歪めて途切れに吐きだす。
「…ハ、…笑える…展開だ、…ッ!どうして…俺が…く、…君の性欲処理の…!!う、あ…!!」
平らな胸に膝頭がつくぐらいに折り曲げてとにかく腰を上下させる。 随分と気持ち良い。が、擦れば気持ち良いのは当たり前だ。人間はそういう風に出来ている。 激しく打ちつけては勢いよく引き抜く。その度に臨也が声を上げた。
「い…あ、ァ…!!」
幾度も幾度も繰り返し、深く抉るように衝動を送る。 抱えた脚が汗ばんで、ぬるぬると滑る。 額からも背中からも汗が流れた。 次第に臨也の声が呻きとは違う声へと変わっていく。
「ア、…ア…!!い、…!!」
俺の律動に合わせて臨也の唇から声が漏れる。 その細い声を聞いているうちに段々また絶頂が近づいてきた。
「…ちっ」
射精の波に呑まれないようにスピードを落としたが、臨也がなぜか泣きそうな顔で俺を見上げた。
「やめ、な…で…」
ひどく弱々しい声だった。 臨也の顔の横に両手を付いて態勢を立て直す。 一滴、顎先から汗が滴って臨也の頬に落ちた。 その汗を舐め取って臨也が微かに笑う。
「シズちゃんの汗もちゃんとしょっぱいんだね」
場違いに浮かんだ柔らかい微笑みに一瞬目を奪われる。 頭を振って意識を切り替えると最後の律動を開始する。 臨也がごく自然な動作で腕を伸ばし俺の首に絡めた。 密着した肌が熱い。それでも、なぜかその熱が心地よく思えて臨也の頭を抱える。 俺の肩口に鼻を埋めた臨也が苦しげに零した。
「は、ァ…シズちゃん…!ごめ、…も、イく…」
口を開く間すら惜しんで俺はひたすら臨也を犯す。
「あ、あ、…!!う、…ア…!」
「…チ…!!オイ、出す、ぞ…!」
言い終わらないうちに、きつく臨也を抱きしめたまま俺の熱は弾けて、どくどくと脈打ちながら臨也の中に精を吐きだした。

暫く吐精の余韻に浸っていたが、不意に俺の下で臨也が声を出す。
「シズちゃん、苦しいんだけど」
「え?あ、ああ…悪ィ…」
まだまともに回らない頭で間抜けな返事を返すと強い力で臨也に肩を押された。 反動でずるりと性器が抜ける。 グロテスクにぬらぬらと光るそれを見ながら、ゆっくりと事態を把握し始める。 喉の奥から吐き気にも似た感覚が競り上がってきて思わず口を覆う。 臨也は薄汚いマットに横たわったままそんな俺を見上げて、いつもの歪んだ嘲笑を浮かべた。
「良い御身分じゃないか。人に突っ込んで脱童貞しておいて、その上初めてのセックスで二回も射精しておいて吐くだなんて」
そうして散らばった衣服を俺に向けて投げつけると吐き捨てるように言った。
「さっさと消えろ、単細胞め」
しかし、その声はどこか震えているように聞こえて、俺は目を細める。 何か言おうと口を開いたが続く言葉が出ずに結局また唇を閉ざした。 手早くズボンを穿いて倉庫のドアに手を掛ける。
「おい…臨也、その…悪かった」
振り向かずにそう言うと、背後から耳を塞ぎたくなるような胸糞の悪い笑い声が聞こえてきて、その笑い声の合間に臨也が言った。
「ハハ、アハハハハハハハハハ!!!悪かった?悪かった、だって?よく言うよ!あははははは!!」
そしてぴたり笑いを止めると「今日の事は忘れろ、お互いの為だ」と言った。 臨也の割にはまともなことを言う、と思ったが、何も言わずに扉を閉めた。

そして俺はこの事実を頭の中から消去した。 女のように弱いだけの折原臨也を記憶の中から消した。 ご都合主義だと罵られようが関係ない。 あんな風にただ俺の暴力を受け入れるだけのアイツなんて存在しちゃいけない。 黴臭いマットも、きらきら輝く埃も、流れ落ちた汗も、あの日、蒸し暑い倉庫で起こった事を全部白昼夢にすり替えて、俺はすべてなかったことにした。

しかし、今、白昼夢は悪夢になって甦る。
壁に押し付けた臨也が人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべて繰り返す。
「シズちゃんったらあの時は酷かったなぁ…アレは完全に強姦だよねぇ」
僅かに顔を横向けて臨也はくすくすと笑う。
「ねぇ、シズちゃん。あの時のゴムどうした?ちゃんと可愛い子に使ってあげた?」
夜に響く耳触りな笑い声。
「そうだ、良い事を教えてあげようか?怒らないでね、ていうか、もう時効だよね」
ビルの隙間を這うように響く、臨也の声。
「あのゴムさァー、実は穴開けておいたんだ」
あはははははははは!!!!耳障りな笑い声。
「シズちゃんがどっかのバカな女でも孕ませて退学になってくれたらいいのにって思ってたんだけど…なかなかうまくいかないもんだねぇ。ああ、それとも…」
臨也が息を継ぐ。
「俺が最初で最後の相手だった、とか?」
また、頭の中で何かが切れた音がした。 気がつくと臨也の首をぎりぎりと絞め上げながら晒された耳朶に歯を立てていた。
「…試してみるか?」
臨也が苦しげに笑った。
「言ったよね?…俺は売られた喧嘩は買う主義だ」
そして悪夢が始まった。