(メイクオ、クオミク前提)

愛しいと思うのはいつも好きになってはいけない人だった。 そして決まって僕のことを見てくれない人だった。 神様、どうして僕は一人なんだろう。

僕はミクを好きになった。 優しい声が、やわらかな体が、良い匂いのする髪が、好きで好きで仕方なくなった。 毎日毎日ミクのことばかり考えている。 僕の頭はイカレたみたいにミクのことしか考えられなくなった。 それがいけないことだなんて思わなかった。 血の繋がった家族を愛しく思うことが間違いだなんて思わなかった。 僕はミクを愛していたんだ。

「ねぇ、ミク今日一緒に居た男誰?」
風呂上がりのミクは念入りに体中にクリームを塗りたくりながら顔も上げずにそっけなく答える。
「プロデューサー」
後ろから見下ろす項には濡れた後れ毛がかかっている。
「ただのプロデューサーとあんなにベタベタしてんの?あいつキモくない?」
白くて滑らかな指先がショートパンツから突き出た長くて形の良い脚の上を滑る。 手を休ませずにミクは言う。
「別に」
「僕、なんかアイツ嫌だ。なぁ、あんな奴と一緒に居るのやめろよ」
キャミソールから出た華奢な両肩がぴくりと震える。 ミクはゆっくりと振り向いてひどく冷めた目で言い放つ。
「…クオくんには関係ないよね?ミクに命令なんてしないで」
前髪からぽたりと雫が落ちる。 それでも僕は引き下がれずに言葉を続けた。
「関係ある、ミクのこと大事だから」
フン、とミクが失笑して空気が揺れる。
「うるさいよ。何なの?ミクの彼氏気取り?」
ミクはそう言って立ち上がるとすれ違いざまに僕の耳元で囁いた。
「クオくんの方こそキモイんじゃない?」

その瞬間に頭の中が真っ白になって、気が付いたらミクの細い体を抱きしめていた。 しっとりと濡れた唇に噛みつくようにキスを重ねる。
「…っ!」
ミクの両目は驚愕に見開かれていたけれど、すぐに唇に鋭い痛みが走って僕は思わず体を離す。 唇を舐めると錆臭い血の味がした。
「…クオくん、こういうの何て言うか知ってる?」
そうして僕の大好きな笑みを浮かべると、蔑むように言った。
「ヘ ン タ イ」
ミクは手の甲でぐいと唇を拭うと強い眼差しで僕を射抜く。
「…誰にも邪魔はさせない。ミクは、絶対にナンバーワンの歌姫になるの」
ミクは言う。
「絶対、なるの」
挑むように唇を噛み締めミクは僕を睨みつけたまま静かに言う。
「邪魔したら許さない」

ミクはその後、本当にトップスターの階段をぐんぐん登っていった。 もう僕なんかの手の届かないところに行ってしまった。 裏でいろいろしていると、ミクの悪い噂もたくさん聞いた。 だけど、それでもミクの歌声は天使のままで微笑みは汚れることなく優しいままだった。 今やミクは世界が認める歌姫だ。

そして、僕はあの日のことを忘れない。 去ろうとするミクの手を掴んで聞いた、あの日のことを忘れない。
「邪魔なんかしない。僕が守るよ、僕じゃダメなの?」
ミクは答える。
「クオくんじゃ役立たずだよ」
それでも縋るように問いを重ねる。
「…あいしてるのに?」
ミクは、答える。
「だってミクは愛してないもん」

「ハイ、お終い。コレがいたいけな俺の初恋の話。どうだった?」
そう言って素っ裸でベッドに横たわったレンを見下ろすと苦しげに眉を顰めて唸った
。 「あ、悪い悪い。そろそろ外してあげようか」
口いっぱいにボールギャグを填められたレンは必死でこくこくと哀願するように頷いた。 そっと手を伸ばすと怯えるようにびくりと体を跳ねさせるから、もっともっと苛めたくなる。 外す振りをして伸ばした指先でレンの乳首を抓ると大きな目を更に広げて泣きだしそうになった。 小さく笑ってからゆっくりとした動作で外してやるとレンは掠れた声で言った。 「…ん、で…こんなこと…するんだよ…」
口の端から顎へと垂れる唾液を舐め取って子供のように柔らかな頬を撫でる。
「愛してるからに決まってるだろ?」
そう言って首筋に吸いつくとレンは小さく悲鳴を上げて「もう、やめて」と泣いた。

(僕は愛し方も愛され方も知らない)